イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第4章 皆との距離
*
(ラッド様、ラッド様、ラッド様……。)
悲しみと、切なさと、自分への激しい憎悪が、嵐のようにテリザの胸で荒れ狂っていた。
彼を好きになるなんて、そんなことが自分に許されるはずがない。
恋に破れるのが怖いんじゃない。ただ、自分のように汚れた人が、幸せになっていいはずがない。
また、壊してしまうのが怖い。
今日は彼が流してくれたけど…ここに、自分の居場所をつくってはいけない。
安らぎを求めてはいけないから。
愛されてはいけないから。
幸せになってはいけないから。
手に取った弦楽器からは、優しく寂しい音がこぼれた。
うたかたのような音色は、夜に溶けていって、幽愁を胸に残していく。
相変わらず、涙は一滴も零れなかった。