イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第4章 皆との距離
ふっと頭を押さえていた手の重みが軽くなった。
「これ以上のこともするのも、男には簡単だからな。気をつけなさい。」
再び、娘に言い聞かせる父のような口調で、ラッドはテリザの髪をなでた。
「おやすみ。早く寝ろよー。」
「はい…おやすみなさい。」
テリザに微笑みかけ、ラッドは廊下に出てドアを閉めた。
(俺は今…何をしようとした。)
柔らかい唇の感触は、まだ残っていた。
寂しそうな瞳が見上げてきたとき、獣のような衝動が頭をもたげていた。
―――二度と、同じ思いはしたくない。
彼女に触れることは、できない。
思わず彼女に何をしようとしたのかと思い返し、ラッドは自分に呆れて溜息をついた。
ポロン…と優しい音色が彼女の部屋のドアから漏れた。
悲しげなメロディーが胸に沁み込み、ラッドは静かに目を閉じた。