イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第5章 閉ざされて
心の中で悲鳴を上げたとき。
バンッと戸が突き破られ、二人の男が戸口に現れた。
「っっ……」
(ラッド、様…)
あられもない姿を見られた屈辱感に、助かったという安堵が入り混じる。
共に踏み込んできたハルが男をテリザから引き剥がして床に投げ出すと、ラッドがつかつかと歩み寄ってその肩を靴のかかとで踏みつけた。
「ぐおっ…」
「よくもうちの妹に手を出してくれたな。」
いつもの余裕は微塵もなく、ラッドは怒りを露わに、もう一度ぐっと男の肩を踏みつけてからテリザに向き直った。
「テリザっ…」
「っ……」
情けない姿を見られたくなくて、テリザは顔を背けて、触られた胸にドレスをかき集めたが、ラッドはテリザの口から布を外し、肩に自分のコートをかけると、彼女の身体を抱き上げた。
「ゃ…」
触れられるのが、怖い。気持ち悪い。
ラッドにでもだった。
だけど抵抗する気力もなく、テリザはくたりと彼の腕に抱かれていた。