イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第5章 閉ざされて
数人の警備員が遅れて部屋になだれ込み、男を確保しているうちに、ラッドはテリザを抱いたまま廊下に出た。
ぼうっとしているテリザの視界の端に、廊下の先に立つユアンの姿が見えた。
近くを通る際、ラッドはユアンと目を合わせて頷いた。
テリザが単独でリックの後を追っていったと知らせてくれたのは、ユアンだった。
当然ながらユアンは彼女の目的を知らなかったが、それでも屋敷中ラッドとハルを探し、伝えに来てくれたのだった。
「遅くなってすまなかった。」
ユアンは深刻な表情で言った。
「いいや…、伝えてくれてありがとう。」
ユアンとラッドの会話も、テリザの耳に入っていなかった。
ラッドはそこからは無言のままだった。
車に入り、そっとテリザを助手席に座らせると、隣の運転席から、彼女を見つめた。
「―――悪かった。」
罪悪感からの痛みのにじむような声に、テリザはゆるゆると首を横に振った。
―――違う。ラッド様のせいじゃない。私が悪いの…。
そう言おうとするのに、身体が重たくて、言うことを聞かない。
「頼むから…いなくならないでくれ。」
苦しげな声。
「………。」
何も答えられないことを、心底申し訳なく思った。