イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第1章 Prologue
ゴトンゴトン…ゴトンゴトン…
規則正しく重たい音で空気を震わし、進んでいく列車の中には、一人の女性がいた。
彼女は窓にもたれかかり、静かに寝息を立てている。
こげ茶色の巻き毛は振動で揺れて、彼女の首にかかった金属のチェーンにちりっと絡んだ。彼女の透き通るような白い肌色の手は、小さめの鞄の上を覆っている。
鞄の口から覗くのは、羊皮紙でできていて、蜜蝋をされていた封筒。
Rad.C――力強い筆記体で、男性の名が記されている。
封筒の便せんには、こう書かれていた。
『ミス・テリザ。
先日あなたの送ってくださった書面に目を通させていただきましたが、オーナーのラッド様とのご相談の末、テリザ様の採用を決定致しました。可能でしたら、今月末頃にここリングランドの「ブルーベル」までお越し頂ければ、ウェイトレスとしての仕事内容の詳細及びこちらの手配します住居に関してお伝え致します。
ご返事をお待ちしております。 オーナー代理 Harold.C 』