イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第1章 Prologue
ほんの半月前のことだった。
カトリック教徒であるこの若い女性――もとい、テリザは、日曜日のミサのあとに食品店に寄って買い出しをしていた。
少し離れた町に住んでいる兄が仕送りをしてくれているが、自分と二人の妹が、婚約中の兄に負担をかけていると思うと心苦しい。
いい加減、女の自分も働き口を見つけなければいけないと焦りも出てきていた。
そう思っていた矢先、美しいティーサロンのの写真が目に留まった。
洗練された雰囲気の内装に、落ち着きのある、でも華やかな外見。
それだけでなく……何か、それ以上の者に惹かれて、テリザは、募集要項に書かれていた住所に、指示されていたように、自分の経歴等を書き連ね、自分の写真とともに送った。
一週間後に採用の手紙が来たときには、正直言ってかなり驚いた。しがない一般市民で、大した学歴もない自分が採用されるとは思っていなかった。
しかし妹たちと兄の為にも、しっかりしなければならない。参ります、との返事を出して、テリザは荷物をまとめた。
出発の前夜、テリザはいつもの教会に行った。教会の神父に祝福をもらった後に、金属製のチェーンを首から外し、その十字架を手に取った。このロザリオは、テリザの愛用するものだった。一番苦しい時に、これで祈った。
そして、今も、家族の幸せを願って。手を組んで、静かに祈った。