イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第7章 雨の音
ポツ…ポツ…と雨粒が頬を濡らす。
テリザが顔を上げる間もなく、ザァ……と激しく雨が降り出した。
(最悪……。)
重たい体を引きずり、荷物を持ってテリザはふらふらとリングランドの街を歩いていた。
街を出てしまおうと思っていたのだが、この時間に鉄道も馬車も来ないだろう、と今更ながら気づいた。歩いていくしかない…とテリザはトランクを抱え直した。
ぐらりと眩暈がする。
熱がぶりがえしたらしい。
冷たい雨が、あっという間に体の芯から冷やしていく。
テリザはふるりと体を震わせたが、バイオリンを濡らしてはいけない…と上着を脱ぐと、ケースに被せた。
両親に買ってもらった、大事なものだから、壊したりはしたくない。