イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第8章 織りなす言葉
「っ……」
優しい味に、こみあげてくるものを我慢して、テリザは俯いた。その様子を見ていたクリスは、低い声で言った。
「好きなだけ泣け」
「駄目、です」
何もかも見通したかのようなクリスの言葉に、テリザは首を横に振った。
「どうしてだ」
「………」
この身の、罪。生涯かかってもぬぐえない痛みと、ラッドへの意識。どうしたってそれはついてきて、胸の底に貼りついていて。安らぐことなど、求めるべくもない。それを分かっているはずなのに。
「私は、罪を犯したんです」
呟くようなテリザの声に、クリスは静かな視線を彼女に向けた。目を合わせないまま、テリザは彼の上着の顔を埋めた。
クリスだからこそ……愛情など求めない相手だからこそ、だろうか。少しずつ、言葉が出てきた。
「……クリスさん。少しだけ、私の話に付き合ってくださいますか?」
クリスはそっと頷いた。
「……ああ」
クリスの返事を皮切りに、テリザはぽつぽつと話し出した。