イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第8章 織りなす言葉
テリザはゆらりと首を振って立ち上がろうとしたが、足が震えてそれもできなかった。また床にへたり込んでしまったテリザの肩に触ると、クリスは目を見開いて彼女のうなじに手を触れた。
「低体温を起こしてる。早く温まれ」
クリスは上着を脱いで彼女の肩にかけてやると、テリザは緩く首を横に振った。
「大丈夫だから……」
「何が大丈夫だ、馬鹿」
クリスはテリザの腕を引っ張って強引に立たせると、椅子に座らせた。クリスが急いで牛乳を火にかけ、蜂蜜を加えた温かい飲み物を作ると、それにブランデーを垂らしてテリザに渡した。
「飲め」
「ありがと、ございます」
じんわりと指先からコップの温かさが伝わってきて初めて、テリザは体が震えていることに気がついた。カタカタと小刻みに体が震えてしまい、テリザはクリスのくれた飲み物に口をつけた。甘さが舌に残り、アルコールの香りが喉を熱くさせた。