イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第2章 ティーカップ
「あの...俺、何か気に入らないことでもしちゃったかな?」
ハルの言葉とともに、リュカが控えめに聞いた。
「い、いいえ...!」
(悪い人じゃなさそうなんだけど...)
「お前が軽そうに見えるので警戒されているんだろう」
(ハルさん...言いにくいことをそんなにあっさり......)
「...ハル、そうじゃないの知ってるくせに、誤解されるようなこと言うなよ」
迷惑そうに顔をしかめたリュカの言葉を聞き流し、ハルはテリザに向き直った。
「彼が、君に会わせるために呼んだ男だ。街で何でも屋のようなことをやっている。」
「ラッド様に頼まれて、君を令嬢に仕立てに来たんだ。クロムウェル家には、令嬢用の衣装もメイク道具もないからね」
「............」
リュカの言葉を聞いたハルの表情がわずかに曇る。
「そんな嫌そうな顔するなよ、ハル」
リュカは彼をなだめた。
(そういえば、ハルさんはラッド様に反対していたんだっけ......)
「彼女が正式にこの件を引き受けた以上、私に反対する余地はない」
そこで一旦言葉を止めてから、彼は複雑そうな表情を押し込めた。
「...だが、この件を成功させるために出来る限りのことはする」
「そうだね、そのために俺が来たんだし」
リュカは微笑んだ。
「いつも悪いな」
ハルが彼にうなずいた。
「お互い様だよ」
(ハルさんとリュカ...は、友だちなんだな)
リュカは甘い笑顔を浮かべて、テリザに手を差し伸べた。
「それじゃ、テリザちゃん。...俺に、ついて来て」