イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第2章 ティーカップ
ハルについて廊下へと出ると、屋敷につかえているメイド達が隅に集まって、にぎやかに騒いでいる。
「リュカ様! 今日はお仕事でいらしたの?」
「終わるのは何時頃? その後お茶でもいかが?」
メイド達が取り囲む真ん中に、笑顔を見せる男の人の姿が見える。
「えーっと...それはちょっと、ムリかなぁ」
(あの人は......?)
「......思った通りだな」
ハルはそう言うと、彼とメイド達に歩み寄った。
「リュカ、何をしてる。君たちは持ち場へ戻れ」
メイドたちが立ち去ると、リュカと呼ばれた男の人がそばへと駆けて来た。
「助かったー。ハル、ありがとう」
ほっとしたように笑う彼を見て、テリザは彼がメイド達に囲まれていた理由はすぐに分かった。
(すごく綺麗な顔立ちの人だな...)
端整な顔、サファイアのようなキラキラとした瞳。女性なら誰でも振り返るような抜群のプロポーション。
「君が...テリザちゃん? ラッド様から話を聞いたよ。俺はリュカ、よろしくね」
「は、はい...よろしくお願いします」
人懐っこく笑う彼に、テリザは挨拶を返した。
「あ、俺は貴族でもなんでもないから、敬語とか要らないよ。リュカって呼んでくれたら嬉しいんだけど」
「えっ、と...」
眩しいくらいの笑顔に思わず声が強張る。テリザは迷って視線を泳がせると、ふとハルと目が合った。
「テリザ、多少は肩の力を抜け。リュカ相手にまで凝り固まるな。」