イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第3章 舞踏会
テリザは、リュカの用意したアクセサリーの中からブレスレットを選び、着て行く服を揃えた。
控え目な白いドレスとアクアブルーの髪飾りを身につけ、鏡に姿を映すと、着替えを手伝ってくれたメイドがほうっと息を漏らした。
「ルナ、さん..?」
テリザが彼女の名前を少し不安そうに言うと、彼女はハッと口をつぐんだ。
「すみません、あまりにお似合いなもので…」
「あ、ありがとうございます。でも…そんなことないです。」
テリザは淡く微笑んだ。
「そんなこと、ありますよ。本当にお美しい…」
テリザの髪を最後に櫛で整えながら彼女は微笑んだ。
テリザは黙ってうつむいた。
(令嬢でもなんでもないのに…それだけじゃなくて、私は…)
心臓が嫌な音を立て始め、テリザは喉を鳴らした。
(――考えても仕方ない、よね。)
「…テリザ様?」
ルナは彼女の顔を鏡越しに心配そうに見た。
「ごめんなさい、なんでもないです。」
テリザがパッと笑ったが、ルナは心
配そうな表情を崩さなかった。
「あの…ご無理はなさらないでくだないね。」
「あら、そんなに陰気な顔をしてました?」
テリザがそう言って笑うと、ルナは首を振った。
「そうではありませんが…ここでの暮らしに慣れるまでいろいろと大変かもしれませんから、何かありましたらいつでもおっしゃってくださいね。」
「っ……」
なぜかテリザは言葉を詰まらせたが、すぐに微笑んだ。
「ありがとうございます。」
瞳の奥の翳りに気づいたのだろうか。ルナは彼女の笑顔が作られたもののような気がしてならなかった。