イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第3章 舞踏会
同刻――
「うーん、テリザはなかなか善戦してくれてるみたいだな」
懸命にステップを踏むテリザの姿を、ラッドが広間の物陰で見守っていた。
その隣にはなぜか、黒衣を身にまとったクリス牧師の姿もある。
「......私に用意させた招待状は、彼女のためのものだったんですね」
ラッドと取引を交わしていた時のような笑みを消し、彼はまた牧師の穏やかな微笑でテリザを見ていた。
「それにしても、ラッド様まで敵方の舞踏会に乗り込む必要はないのでは?」
「だって気になるじゃないか」
ラッドが楽しそうに答えた。
「そういうものですか」
ラッドに笑みを返し、クリスがテリザへちらりと視線を投げる。
「可愛いだろ。手、出すなよ」
ラッドが冗談交じりに言うと、クリスはニヤリと笑った。
「ご冗談を、ラッド様」