イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第1章 Prologue
翌日、二人の妹に見送られ、故郷を離れた。
兄には、昨日、町を離れる、兄の幸せを願うとだけ言う手紙を出した。
涙目になる下の妹の額にキスをして微笑み、列車に乗り込んだ。
遠ざかっていく町を見ていると、キリキリと胸が痛んだ。
――あの人は、来なかった。期待はしていなかった。来られても、さらに苦しくなっただけかもしれないから、これでよかったのかもしれない。
それでも。
知られてはいけない、苦しさしかない気持ちだったけど。彼が好きだった。
ずきずき痛む心を押えようとしたが、ただ苦しかった。
――でも……もう、終わりよね。
気持ちに蓋をして、目を閉じた。
これからの時間で、テリザは多くの人と出会い、彼らに―――そして彼らをも、運命が大きく突き動かされることを、テリザは知る由もなかった。