イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第4章 皆との距離
その日の夕方。外に出していた黒板を中に片づけながら、テリザはふと顔を上げた。
「ねぇ、アレク。このあたりに教会ってある?」
今日は土曜日だ。故郷では毎週、日曜日の朝には教会に通っていた。ブルーベルの仕事を始めてからはそうするのは難しいかもしれないと思っていたが、他に空く日にでも行こうと思っていた。
「教会…?」
しかしアレクはなぜか眉根を寄せた。
「何のために行くんだ、そんなところ。」
「そんなところ、じゃないよ。私には大事なことなの。」
険しい表情をするアレクに、服の下に入れていた、金属製の鎖に連ねた、透明のビーズのロザリオを出して見せた。
先に付いていた十字架には、イエスの姿が形取られている。
使い古されたチェーンの色はやや黒ずんでいて、いかに大切に使われていたかがよくわかる。
アレクは大げさに溜息をついた後、渋々口を開いた。
「郊外に…小さい教会なら、ある。」
「本当?じゃあ、その場所…」
「だめだ。」
テリザが言い終わらないうちにアレクが遮った。