イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第4章 皆との距離
(……何だ、あいつ?)
教会から急いで出てくる人影を見て、クリスはとっさに教会の陰に入った。
見れば、それは若い女性だった。
濃い色の巻き毛に、真っ白な肌色。見覚えは、あった。
(ラッドに使われた、あの女じゃないか。)
彼女が、ここに何をしに来たのだろうか。ここは教会だし、礼拝堂は戸締りはしていないとはいえ、不審感はぬぐいきれない。
(…なんて訳がないか。まさかあいつ、信者なのか?)
―――本気で信じている人は、恵まれた者だけだろう。
(もし神とやらがいたら…あんなことにはならなかった。)
過ぎたことを思い出しかけ、クリスは息を吐き出した。
―――もう、どうにもならないことだ。
そう思い、彼は教会の中へと戻っていった。