イケメン夜曲 ~幸せの夜曲~
第4章 皆との距離
「ラッド様…差し出がましい真似はすべきでないと思って黙っておりましたが…」
「ハル、前置きはいい。俺は可愛い弟の言い分を聞きたい。」
(え…?弟さん?ハルさんが?)
テリザが内心で首をかしげた。
「何度も申しますが、私はあくまでもラッド様の執事です。
ですが口を挟ませていただけるなら…本当に、これは良い計画でしょうか?危険がないとも言えません。」
「大丈夫だ!もちろんテリザ自身が無理だと思えば断ってくれてもいいし、よしとすれば俺が全力で守る。」
さりげなく紳士的な言葉に、テリザはドキリとした。令嬢でもないのにそのように扱われ、つい嬉しくなってしまう。
だけど、それだけじゃなくて…これは、自分の招いた事態だ。責任を取るのは当たり前だ。
「私なら、大丈夫です。ぜひご協力させてください。」
その言葉に、ハルは黙り込んで目をそらした。
「ありがとう、テリザ。助かるよ。」
ハルとは対照的な様子のラッドは言った。
「いえ...私は、自分のしたことへの代償を払っているだけです。」
淡く微笑んでそう言うテリザに、ラッドは目を丸くした。
「ティーカップのことか?それならもう気にするな。コインを取ってきてくれた時点でそれはチャラだ。
この家に留まってもらってるのも、この件に付き合ってもらうのも、全部俺の言ってることだからな。」
安心させるような物言いに、テリザは頬を緩めた。
(私に気を使わせないようにしてるんだよね…本当に、優しい…。)