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嫌われ狸の一生

第12章 妹 ~別離~

あんなに大好きで、守ってあげたかった妹と別離を迎えるとは、軽率な恋だったな・・

幼い頃から親友で一緒だったから、妹にしてみればカノジョもまたボクの妹的に思っていたのだろう。
それが恋愛なんて、兄と妹が関係したみたいな不潔なものだったのだろうな・・

ボクは世間体とか体裁なんてものは大嫌いで、まったく構わないが、妹はそういうことをスゴく気にする。
だからボクが結婚すると知った時に式には呼んでくれと言ってきた。

親戚とかの手前、妹が式にも来ないなんておかしいからね。

ボクも妹の結婚式には行った。

妹は結婚は絶対にしないと言っていた。
それを貫いて結婚したのは30になる頃。
あんな家に育ち、兄さんも不潔極まりないことをしたんだから、男性不信、家族はいらないと思うのも仕方ないだろう。

でも、恋人はいた。家庭は重いけど恋人は欲しかったのだろう。

相手は高校の同級生で、何度もプロポーズされてもその度に断ったのだが、カレの熱い気持ちについに結婚することを決めたらしい。

カレもまた他には女も作らなかったってことだ。
よく30までガマンして待ったものだな。
多分カレは妹以外の女を知らない。
ちょっと信じられない。こんな男もいるのか・・いや、多分おかしいのはボクでこれが普通なのだろう

そんな運びで結婚したから夫婦仲はとってもいい。
カレは一流会社のエリートだから経済的にも恵まれている。

温かい家庭を求めていたボクが家庭崩壊の歴史を繰り返し、家庭を否定し続けた妹が温かい家庭を手に入れるとは何とも皮肉なことである。

妹夫婦には子供はいないが・・
作らない主義で生きているのか、どちらかの肉体的な理由なのかは知らないけど、あれだけ仲がよければカスガイは不要だろう。

ウチは子供がいなければとっくに離散・・その方がリセットできてよかったかな。
今やバツイチなんてステイタスのひとつ・・なんて考えてるボクはやはりおかしいかな。

妹とは父親がガンで倒れた時と葬式や回忌の時には会ったけど、必要事項を事務的に話しただけで、ちゃんとした会話はできていない。

ガンダムのシャアとセイラみたいに分かり合えない兄妹を見ると妙に感じるものがあるな。
昔はジュドーとリィナみたいな兄妹だったのにね。

悪いのはボク・・またひとつ数えるべき罪が増えた

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