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嫌われ狸の一生

第15章 子連同棲

若い頃のボクは仕事中は怒られたりひどい目に遭って夜は一人で飲みに行ったり部屋飲みをして泣いていることが多かった。

叱咤激励という言葉はよく聞くが、叱咤、叱咤、叱咤、叱咤・・・・たまに激励ってカンジ。

夜は泣いているばかりでなく、企画を考えたり、企画書を作ったりもしていた。
今ではコンプライアンスの関係で書類は簡単には持ち出せないけどね・・・

22の頃に行きつけの飲み屋さんができた。
リーズナブルだし、同じ会社の人が来ない・・ボクはアフターファイブや休日まで会社の人と会いたくない主義なので、会社の人が来ない店を選んで飲む。
それは今も変わらない。

そして、その店の女将さんが超ボクの好み。
かつて恋人だった10歳上のお姉さまとは似ているところもあるが、違う可愛さもある。

そう、この女将さんがボクの二度目の恋人。
妹の親友のコとはそんなに深い仲になる前に別れさせられたし、期間も短かったし、黒歴史となってしまったので、このお姉さまが二度目の恋人ってことで。

この店によく行くようになったのは、女将さんを見ていると心が和むから。いつも閉店ギリギリまでいたな。

まさか恋人になるなんて思ってなかったし、歳の離れた女性との恋はもうやめようと思っていたので、この店で一人飲みする時は泣いていたし、泣きながら企画を作ったりしていた。

客が早めに途切れたある日、一人で飲みながら企画を作っているボクに女将さんがビールをサービスしながら話しかけてきた。暖簾はもうしまっていた。

強いし、前向きな人ね。その強さはどこから来るのかしらとカノジョは言った。

強い?いつも泣いているボクが?

仕事でツラいことがあって泣いていても決して負けないよね。仕事のことを考えている時のその目が好きよ、いつも前しか見てないとカノジョが言う。
夜は泣いても、明日になれば平気な顔して仕事に臨むんでしょとも言われた。

当たっていた。泣くのは一人で酒を飲む時だけ。酒と一緒に涙も飲んで、仕事中はポーカーフェイスなのがボク。

それも今も変わらない。
ボクをうつ病に追いやったパワハラクソジジイの時は周囲に心配されるほどに病んでいたが・・

その夜は遅くまでお姉さまと飲んだ。
飲みはいつか居宅部分の部屋になっていた。
カノジョが12歳上の小さな子持ちのバツイチさんであることをその時に知った。

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