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嫌われ狸の一生

第17章 憎しみ

子供が生まれて一年ぐらいは妻の実家に同居した。
一番手がかかる時に両親に助けてもらえるのはありがたかった。

子供が生まれる頃から妻のおばあちゃんの具合が悪化して病院に入院した。元々病気で体が不自由だったが、いよいよ最期に向かい始めたのだ。

こうなると妻は急におばあちゃんが可愛そうだ、今まで悪かったと憎むのをやめた。
病院にも何度か見舞いに行った。

子供は無事に生まれた。

子供が生まれてからしばらくはおばあちゃんは生きていた。生きているというだけで、ほとんど寝たきり。

でも、子供を連れてお見舞いに行くとすごく嬉しそうだった。
満面の笑顔で手を伸ばして子供の手を握ってくれたその様子は感動的なものだった。

それからほどなくしておばあちゃんは亡くなった。生まれる命と消える命、まるでおばあちゃんの命とひきかえに子供が生まれたようだ。

おばあちゃんが亡くなってすぐに両親は家を出て自分たちで生活していくように言い出した。

妻と不仲なおばあちゃんがいなくなったのに不思議な気もするが、恐らく仕事柄時間が不規則なボクのことが迷惑だったのもあるのだろう。

朝は早いし、夜は遅い。休日出勤もある。

ボク的にはもう少し妻の実家にいたかった。
イヌがボクにすごくなついてくれて、子供と同じく誰よりも大好きな存在だったのだ。
イヌとの別れはツラい。

そして実家を出てボクたちだけで暮らし始めると妻の悪しき本性が露になっていく・・

まず、常に誰かを憎み、憎悪を燃やしていないと生きていけないこと。

今まではおばあちゃんが憎しみの標的だったが、今度はボクの母親が標的になった。

妻の実家にいる時は来にくかったが、ボクたちだけで住むようになったので、孫の顔を見に差し入れをもってきてくれたことがある。

そんな当たり前のことなのに、何が気に入らなかったのか妻は突然母親にブチキレた。
その様子はおばあちゃんに怒りをぶつけていた様子そのものだった。

それから妻はボクの母親の悪口を毎日事あるごとにわめき散らすようになった。

いくらあまり仲がよくなくても、関係のない母親の悪口を毎日わめかれたら頭にもくる。

どんなにボクが激怒しても治まることはなく、悪口雑言は激しくなっていく。

最低の人間だ、死ね、バカだとわめき散らす。

時々は治まることがあったが、それは別の標的ができた時だ。

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