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嫌われ狸の一生

第30章 父親の死

妻と子供が戻ってきてからの2年間は、うつ病も治り比較的おだやかに時が流れた。

高血圧と心の治療として始めたウォーキングは子供も一緒に行くようになっていた。

仕事も、通勤が自宅から近いところにある系列会社に出向になり、自由にできていた。
直接は何も言われていないが、レセプトでうつ病のことが分かったための配慮かも知れない。

戻ってきてからの妻の態度も変わることはなかったが、ボクは相手にしないことで家庭内別居を強化した。ヘタに怒ればシェルターに逃げてDV訴訟を起こすようなヤツだ。

別居している間に子供の学費用の口座に将来自動車学校とかで遣えるように多目に貯めておいたカネを使い込んでやがったが、ちょっとキツめに注意しただけで終わらせた。

本当に手くせが悪い。人間のくずだ。
やはり警察にでもつきだしておくべきだったかな。
当時のボクにはそんな元気はなかった。

そんなカンジで時が流れていく中、母親から突然の連絡があった。

父親がガンで倒れた。

結論的にはこの知らせを受けてから入院するが半月弱で父親は亡くなった。

連絡の翌日に家族が集まった。

連絡を受けた時に母親が妹と連絡が取れないと言っていたので、ボクから妹に連絡した。
妹夫婦は休暇を取って旅行をしての帰宅中だったらしいが、ボクとは口をききたくないらしく、妹のケイタイには夫が出たので、ボクは手短に用件を伝えた。

かくして久しぶりに家族が集まったのだが、急に可愛そうだとか言い出して妻もきた。
あれだけ母親を憎んでおきながら、普通の妻のようにボクの身内が集まっているところへ平然とくるコイツの神経はボクには分からない。

久しぶりに、わだかまりだらけの家族が集まったこの雰囲気はドラマのクライマックスのようだ。
父親という男のドラマのクライマックスなのだろう。

数日後、ボクは休暇をとって父親の入院の手伝いにいった。

ガンは末期で、排泄もままならなくなるということで、おむつとかの介護用品や生活用品を買いに、母親とふたりで、うつ病の時に会ったショッピングセンターに行った。

父親は機嫌がよく、今度静岡に等身大のガンダムがくるから子供を連れて行くといいとか言ってくれた。

ずっとボクが好きなこととかのニュースをチェックしてくれていたのかと思うと涙が出る。その場では嬉しそうにして、帰り道で泣いたっけ。

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