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嫌われ狸の一生

第30章 父親の死

その様子を見て母親はあの人の子だよと笑った。

父親も何があっても仕事には絶対に穴をあけない人だった。
ガンと診察されても動けなくなるまでは仕事をすると言い張っていた矢先に倒れたらしい。

病院の費用も葬儀費用も墓の費用も父親の保険金で賄えた。それでも多少の残りがあったようだが、費用が足りたのならあとは興味ない。

残りがあったのならそれは文句なしで母親のものだ。

65になっていたらこうはいかなかったらしい。
亡くなる時までそういうことを気にしていたのかな。

棺桶に入る時は白装束が一般的だが、今は服装は自由でいいらしい。

父親が生前に好んで着ていた普段着で送った。

妻と子供にはボクが死んだらいつも着ているジャ~ジで送ってくれと言っておいた。
間違ってもスーツや仕事着はごめんだ。

こうして父親の波瀾万丈な人生は終わった。
ボクの中にはとても書き表せないぐらいいろんな感情があった。

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