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嫌われ狸の一生

第33章 犬

家を建ってすぐに念願の犬と住むようになった。

妻の実家に同居していた頃は、妻との関係も良好だったが、それでも妻よりも犬が好きだった。

妻の家の犬が亡くなったのは、例の夏休みの間中子供を連れて実家に帰り、子供との夏休みを奪われたことで大喧嘩になって別居した、あの夏休みの少し前。

忙しかったし、通勤も遠くて、泊まり出張もある中で、犬の死に目に会えたのはキセキだ。
最後にボクに会いたくて待っていてくれたんだね。

家を建ったのは、別居騒動があった翌年。
家を建っても妻との関係が良好なものになるとは信じていなかったので、犬と暮らせることが大きな要因だった。

最初の犬は赤茶色のダックスフンド。
捨て犬を保護したのをもらってきたので、最初は警戒しているのか、全然なつかなかった。

子供がまだ小さかったのに手を噛む事件があり、この時ばかりは犬をキツく叱った。
犬はブルブルと震えて萎縮して、その様子が可哀想になって、反省したならいいからもう噛むなと犬を抱きしめてやった。

そんなこともあって、犬とは信頼関係が生まれた。
寝る時はいつも一緒。お腹を見せて仰向けに寝たり、いびきをかいて熟睡したり、警戒心はなくなって心を許してくれるようになった。

冬なんて目覚ましが鳴ると布団にもぐり込んだりして妙に人間らしい。

妻にありもしないDVで訴えられて、うつ病になった時はいつも寄り添って励ましてくれた。
一緒に泣いてくれた。

仕事も早く帰れるわけじゃないので、犬も寂しい思いをしていただろうに、いつも寄り添って励ましてくれた。

この時にちゃんと生きていられたのはこの犬のおかげだ。

クソジジイのパワハラでうつ病になってボロボロの時も犬は寄り添って励ましてくれたし、一緒に泣いてくれた。

クソジジイから解放されて約2年後にこの犬は亡くなった。

推定4歳でもらって9年一緒に過ごしたから、13歳ぐらい。犬なら長生きの方かな・・
もらったばかりの時に病院でもう少し若いかも知れないと言われたので、ちょっと嬉しかったのにな。

犬は夜中にボクに寄り添うように亡くなっていた。
何かを感じて目を覚ましたのだが、もう少し早く目を覚ましていれば送ってあげられたのにと思うと後悔してしまう。

死期を悟った動物は独りで逝くことが多いみたいだけど、この犬は最後にボクといたかったのだろう。

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