
どうか、
第1章 明野の加害。
「…まあ、夢はまだ、かな」少し間が空いて、今度は高木から話しかけてきた。
「…へえ。そっか」
安堵、安堵、安堵。
まだ。その言葉の響きが、まるで高木はまだ誰のものでもない。そんな意味を孕んでいた気がした。
「桜太郎は?なんかないのか?」
「…なんかって?」
「そういうフェチズム的な何か。セックスにはつきものだろ」
「…僕は別に、なにもない」
「そうか?まあ、俺が女ならお前みたいな容姿端麗に何されても喜ぶけどな」
そういって高木はまた微笑む。
心臓が嬉しそうに飛び跳ねる。高木は僕を容姿端麗と言った。高木に認められていた事実が何よりも嬉しくて、そしてさっきの言葉の意味を考えて少しそんな気にもなってしまう。
「…どんなことでも?」
