10分屋【ARS・N】
第11章 先に生まれただけの僕たち
二宮「それと、これ持って帰ってよ。」
俺は紙袋を鳴海校長に差し出した。
中をのぞいた鳴海校長は目を丸くした。
鳴海「これは…。」
二宮「野球のボールだよ。部員に渡してあげて。」
紙袋の中身は、野球の硬式ボール5ダース。
二宮「部員には、ちゃんと『二宮先輩から』って言ってよ!」
鳴海校長は、驚いた顔を見る間にくしゃくしゃにして笑った。
鳴海「ありがとうございます!」
鳴海校長は、何度も頭を下げて、紙袋を大事に抱えて帰って行った。
俺はコーヒーカップをシンクに下げた。
俺が通った京明館が今の京明館だったら、俺の高校生活は少しは違っていたのかもしれない。
しかし、俺はもう高校生には戻れない。
ましてや、野球部員にもなれない。
せめて、
自分自身がボールになってあの部員たちとともにグランドで駆けまわり、甲高い音を立てて青空に吸い込まれる。
そんなことを味わってみるのもいいかな、と思っただけだ。
二宮「しまった。ボールひとつひとつに、『贈呈・二宮和也 』って書けばよかった!」
【先に生まれただけの僕たち・おわり】
俺は紙袋を鳴海校長に差し出した。
中をのぞいた鳴海校長は目を丸くした。
鳴海「これは…。」
二宮「野球のボールだよ。部員に渡してあげて。」
紙袋の中身は、野球の硬式ボール5ダース。
二宮「部員には、ちゃんと『二宮先輩から』って言ってよ!」
鳴海校長は、驚いた顔を見る間にくしゃくしゃにして笑った。
鳴海「ありがとうございます!」
鳴海校長は、何度も頭を下げて、紙袋を大事に抱えて帰って行った。
俺はコーヒーカップをシンクに下げた。
俺が通った京明館が今の京明館だったら、俺の高校生活は少しは違っていたのかもしれない。
しかし、俺はもう高校生には戻れない。
ましてや、野球部員にもなれない。
せめて、
自分自身がボールになってあの部員たちとともにグランドで駆けまわり、甲高い音を立てて青空に吸い込まれる。
そんなことを味わってみるのもいいかな、と思っただけだ。
二宮「しまった。ボールひとつひとつに、『贈呈・二宮和也 』って書けばよかった!」
【先に生まれただけの僕たち・おわり】