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Face or Body

第3章 カケル(27)

あの日の朝
俺は
目にうつるものすべてが
キラキラ輝くように見えた…。

何をやっても長続きせず
女手ひとつで育ててくれた母に
いつも涙ばかり流させて
苦労をかけた。

中学でタバコを覚え
高校でシンナー…
傷害で何回も警察の厄介にもなった…。
でも
ある日…
あのオヤジに出会った。

オヤジはまるで俺を息子みたいに
可愛がってくれた…。
俺はオヤジに出会えたことで
まっとうな人生を歩こうと心に誓った。

そして4年前…
やっとそのオヤジの紹介で
正式採用が決まったんだ…

その初出勤の日
あの電車のなかで
痴漢に間違われた…
いや
正確には連続婦女暴行および傷害の
現行犯として逮捕された。

苦労ばかりかけてた母は
そのショックから
皆様に申し訳ない
あんな人間に育ったのは
全部私の不徳のいたすところと気を病み…
発作的に死を選んだ…。
俺の服役中に。

オヤジが探してくれ
俺を雇おうとしてくれた工場の社長も
その後
工場の経営が立ち行かなくなり
倒産失踪したらしい…

冤罪なんだ…
俺は痴漢なんてできない
俺は連続婦女暴行なんてできない…

なぜなら
俺は男しか愛せない
闇なような性癖を持っているからだ。
でも
警察でも
裁判所でも言えなかった…

母にこれ以上
恥ずかしい思いをさせなくなかったから。

もう…
全部終わったことだ…
ただ
まっとうに人生を
歩み始めようとしていた俺の
出鼻を見事に…
そう見事なほどに誤認して
俺の人生に
性犯罪者という不名誉な傷を与えた
あの女に
屈辱の人生を味わってもらわないと…

アオヤマヒカルに天誅を!!

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