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『えっ…？』

家に灯りが灯っていない…。

たしか
アキラは今日は早番勤務なのに…。

ヒカルは
アキラにどんな顔をして
『ただいま』と言うか
緊張していたぶん
なにか気が抜けた気がしていた。

玄関のドアを開ける…。
まだ一緒に暮らして1ヶ月ほどなのに
ほんのりとかおる
自宅の空気がヒカルに
なんとも言えない安心感をもたらした。

『ただいま～』
ヒカルは誰もいない
暗闇にむかいそう呟いて
部屋の灯りをともそうとした瞬間!!

『おかえり―――――――――――――!!』
『ヒカル―――!!お疲れ――――――――!!』
『おう!!無事だったなぁ～!!』
『お疲れさまでした!!心配してました!!』
『ヒカルちゃ――ん!!おかえんなさい!!』
『おかえりなさい…。』

いきなり
リビングの明かりが点り
クラッカーが弾ける音までした…。

そこには
アキラの暖かい笑顔に
サクラコ…
さらにはシンタロウ…
海浜署の先輩たち
そして後輩のタモツまで
懐かしい顔があった。
アキラの妹サチもいる…。

川崎市公園薬物死事件の
区切りがついたことを知った
海浜署の仲間が
つい数時間前に
アキラの帰宅に会わせるかのように
ここに集まってきたのだった。

予想外の展開に
戸惑いながら
安心からか苦笑いが止まらない
はにかむ仕種をするヒカルの視界に
仲間たちの後ろから
控えめにヒカルを見つめる
母の姿を発見した…。

『……えっ？お母さん？なんで…？』
とヒカル。

『いや…、実はさ…ヒカルが潜入に入った数日後に、お母さんが訪れてくれてさ…』
とアキラ。

ヒカルの母美里は
ここにはいない
海浜署時代の上司である
久保寺から
手紙をもらっていたのだった…。

その手紙には
ヒカルがこんど転属する部署は
優れた若手たちが
潜入捜査という危険と背中合わせの
任務を遂行する部署であることや
新婚間もないヒカルが
家事と仕事を両立するのは
大変なことになるであろうことを
綴っていた。

そして
『母上様、ぜひお嬢さんの頑張りを認めてあげてください。優しい笑顔をかけてあげてください』
と結んであった…。

美里は
今まで最愛の息子であり
ヒカルの兄であるケンタの
不遇な死を引きずって
ヒカルへの暖かさを失っていたことに
気づき反省し
とりもなおさず駆けつけたのだった…。