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『ヒナちゃん…。ママはまた明日からお仕事で帰らないからね…』
サヤカは
娘のヒナの頭を撫でながら
そう言った。

『じゃあまたヒナは、トオルおじちゃんち？』
とヒナはサヤカを見つめて
呟いた。

サヤカは
潜入捜査の結果
かつて捜査対象者と肉体関係をもち
その結果妊娠した…。
潜入捜査が終わる頃には
すでに中絶が不可能な時期となっていた…。

サヤカの夫は
潜入捜査の果てに
他人の子供を孕んで帰ってきたサヤカを
許すことができずに
サヤカのもとを去っていった…。

ヒナはそのときの子供である…。

サヤカは
父親は誰であれ
授かった命に対しての責任と
なにより
自分の中の母性に素直にしたがった。

サヤカは
潜入捜査に入るときには
ヒナを弟夫婦に
預かってもらっている。

サヤカの弟のトオルは
サヤカとは10歳としの離れた弟である。
幼くして両親と死別した
トオルにとっては
サヤカは姉というより
むしろ母に近い感覚みたいだ…。

その朝…
ヒナを預かった
トオルはサヤカに
『アネキ…　身体が一番だよ。危ない目にあわないように!!　ヒナちゃん心配させんなよ』
と囁いた。

『ありがと…。』
サヤカはトオルに礼を言ったあと
ヒナの頭を撫でて
『ママ、行ってくるね。』と囁いた。

『ママ――――っ!!頑張ってね～♪』
ヒナの
無邪気な声が
サヤカを強くする…。