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Face or Body

第53章 再会 ~ダンナとオヤジ

『私には、一平ちゃんも知るように、時任一朗という表の名前がある…。これでもこのベイエリアでは、よく知られた町の篤志でね
………。 私は闇世界を形成するのと並行して、表の顔を築くのにも全力を尽くした。』
続けて
『そう…。一平ちゃんが、警察官になるべく必死で学び、必死で事件捜査で成果をあげ続けて、ノンキャリアで県警本部の組織暴力対策室長までかけ上がったようにね…』
とダンナこと村山の半生を
例えにしながら
山縣は語り続けた。

『何年も前… 私には一時期、港竜会打倒への復讐の炎が弱まった時期があったんだよ…。一平ちゃんにはなかったか?この50年間のなかでそんなこと……。』
山縣は
村山の瞳を見つめてそう問いかけた。

村山は
警察学校の教官時代の
ヒカルの眩しいくらいの
まっすぐで汚れのない正義に触れて
やはり一時期
港竜会打倒の執念が薄れた時代があった…
ふとそんな過去を思い出した。

そんな思いを巡らせる村山に
山縣は口を開き
『私は、このベイエリアで社会から落ちこぼれそうな崖っぷちで這い上がりたい!!と願う若者やその家族の苦しみと、町の篤志家としての時任一朗として向き合い、解決するうちに… ……時々、港竜会を叩き潰すことよりも、表社会のギリギリで闇世界に落ちないように踏ん張る若者を救うことに生き甲斐を感じるようになった時期もあったよ…。』
山縣は2本目のタバコを吸いおえて
灰皿に吸い殻を置いた。

『一平ちゃん… 遠慮しないでもう1本吸わないか? このビルはご時世柄、全館禁煙だが、この社長室だけは治外法権だ…。』
と山縣は
少し微笑んだ。

そして
さらに語り続ける。

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