
泣かぬ鼠が身を焦がす
第9章 磯の鮑の
今……そんな風に言うのかよ……
前は変に優しくしてきたクセに
ずるい
「…………人の話聞けよ」
苦し紛れに言った言葉は杉田さんに
「お前は俺の物なんだから、俺の好きにするに決まっているだろう?」
と一蹴された
ほんと、ずるいよ
顔にやけて、絶対変な顔してる
「ノラ、まだ飯残ってる」
「……わかってるよ」
杉田さんに促されて、どうにか俯いて隠していた顔を上げる
あとちょっとだし、ちゃっちゃと食べちゃおう
気合を入れて箸を持つと、机の反対側からは箸を置く音が聞こえた
見ると、杉田さんは忙しなく箸を動かしていたせいかもう食べ終わっている
「え、はや……」
思わず呟くと、逆に「お前が遅いんだろ」と言われてしまった
遅いだと?
ちゃんと食べるし
ちょっとの差くらいで偉そうに
「……」
少しむっとしつつ食事を再開しようとすると、俺の箸は何故か杉田さんに持って行かれた
「えっ……ちょっと、何? 返してよ」
俺の抗議に何も言わず、杉田さんは席を立つ
はぁ?
何がしたいのこの人
早く食えって意味でさっき煽ってきたわけじゃないの?
