
泣かぬ鼠が身を焦がす
第9章 磯の鮑の
「ぅ……ぁ、あーー……」
口を開けると、箸に摘まれたおかずが入ってきた
そしてそれと一緒に杉田さんの顔に笑顔が浮かぶ
恥ずかしい……
し、その顔反則
「…………」
咀嚼する途中、俺の顔を覗き込んでくる杉田さんを見て俯く
俺はもう絶対顔真っ赤だし、膝の上にいるのにもじもじしちゃって気持ち悪いし
最悪
「美味いか?」
「……さっきまで食べてたやつじゃん」
妙に上機嫌な杉田さんにまた毒づいてみたけど、杉田さんは俺のちゃんとした答えをずっと待っていて
「…………美味い、よ」
結局また俺が根負けして呟くように答えた
俺の答えを聞いた杉田さんはさっきよりも上機嫌そうな顔をして微笑んでいる
笑わないでよ
もー……
なんか、心臓が
おかしくなりそ
「ほら、次」
「……ん……」
甲斐甲斐しく俺の世話を焼く杉田さんはどんどん俺の口元に料理を運んでくる
残り少なかったはずの料理はそうやって食べさせられたせいで、すごい時間を使って漸く食べきった
「……ごちそうさまでした」
「よし。じゃあ、風呂入るぞ」
明らかに『一緒に』って意味を含んだ言い方に、こっそり溜息をつく
