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泣かぬ鼠が身を焦がす

第10章 3日飼えば恩を忘れず


クソオカマ!!
語尾にハートつけんな!


「悪いが車なんだ。ノンアルコールで」
「嫌だ、アタシんちに泊まってもいいのにぃ」


とは言いつつも喜んで酒の並ぶ棚に向かうヒトミさん
その背中を睨んでいると、杉田さんが俺の肩を叩いた


「ノラ」
「ん? なに?」
「飲み物受け取ったら離れるから。好きなだけ話してこい」


まぁ、聞かれてマズイ話するわけじゃないけど


「うん。ありがと」


とりあえず、ヒトミさんから杉田さん引き離したいし
そうしとこ


「お待たせぇ、はい」
「どうも」


ヒトミさんがカラフルな色をした飲み物を差し出すと、杉田さんは珍しく笑いかけてから奥へ入ってく

まだ時間が少し早いせいか、客が少なくて助かった


「あぁん。行っちゃったぁ……」
「……おい」


杉田さんがいなくなると、その背中を眺めていたヒトミさんが俺を見る


「また『ノラ』なのね? 純(ジュン)」


その呼び名に、懐かしさを覚えて顔が緩んだ


俺の本当の名前
今じゃ、ヒトミさんしか呼ばない名前


「気に入ってんの。俺にぴったりでしょ? 誰にでも擦り寄って鳴くの。にゃー」


べ、と舌を出すとヒトミさんに額を叩かれる

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