
泣かぬ鼠が身を焦がす
第10章 3日飼えば恩を忘れず
俺の小さな肯定に、ヒトミさんはにやにや笑った
「な、なんだよ……」
「いいえ? あの純ちゃんが、成長したわねーって思って?」
くそ
ちゃん付けんな
顔が赤いのなんか話してる途中からわかってたけど、今は多分もっと情けない顔してる
ちくしょー
腹いせにコップの中身を全部飲み干す
すると、にやけていた顔を急に真面目に戻してヒトミさんが俺に近づいた
「なに?」
「相談に乗る前に、さっき話に出てきて思い出したの。アンタの前の飼い主、最近この店に出入りしてんのよね」
「は? あいつが? なんで」
「アタシが知るわけないでしょ。まぁ、普通に考えれば純を手元に戻したいか……」
戻したい……か?
「刺したいか、ね」
「物騒!」
「人に恨まれたって仕方ないじゃないの」
「そうだけど……」
いや、まじでヤバイな
なんで今更?
俺がいなくなって結構経ってるはずなのに
「あちこち探し回ってるみたいだから。気をつけるのよ?」
「普段は部屋に閉じ籠ってるから大丈夫」
「あらそう。ならいいんだけど」
ヒトミさんが体勢を元に戻したその時、扉の開く音がして新しい客が店に入ってきた
