テキストサイズ

泣かぬ鼠が身を焦がす

第11章 昔離れたあわせもの


杉田さんの視線もだんだん強くなって、2人でばちばちと火花を飛ばす

そこに、携帯の着信音が響いた


「……俺のだ」


鳴ったのは藤本の携帯らしくて、ポケットから取り出してそのまま電話に出る


「俺だけどーーうんーーーわかった。じゃあ」


そして、電話を切るとまた俺たちを見て


「今日は帰る。またね、ノラ。近々迎えに行くから」
「え……」


そう言って早々に店を出て行ってしまった


なん、か……
いきなり来ていきなり帰ってったな


「ノラ〜〜〜!ごめんねぇ!私が連れて来ちゃったからぁ!!」
「アキ!!ほんとあんたは反省しなさいよ!!!」


藤本がいなくなるなりハイテンションで話し始める明人とヒトミさんに、今は答えることができない


あいつ、迎えに来るって言ってた
藤本ならどんな手段も選ばなそう、だし
どうしよう


すると、俺に代わって杉田さんが話し出した


「すまないが、今日はこれで失礼する。これで足りるか?」
「こんなにいいのぉ!?あたし金払いのいい男は大好きよ?」


ウィンクかましたヒトミさんを軽くあしらって、杉田さんは俺の手を引く


「行こう、ノラ」
「……うん」


俺たちが歩き出すと、明人が俺の服の裾を掴んだ


「ほんとに、ごめんなさい。ノラ……許して……」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ