
泣かぬ鼠が身を焦がす
第11章 昔離れたあわせもの
しゅん、と俯いて本当に反省してる様子の明人に、俺も怒れなくて肩を叩いた
「怒ってないから、気にすんな」
「……ん……」
俺が笑うと明人も少し顔を綻ばせる
「またね」
別れの言葉を言って俺が手を離そうとしたら、明人が引き止めるように手を取った
「うん。ノラ、好き」
「俺も。じゃあ」
もうちょっと、明人とも話したかったな
いい子なんだよ?本当は
再び別れの言葉を口にして、俺も杉田さんに続いて店を出た
「……」
「……」
店から駐車場までは会話は全くない
何言えばいいかなんてわかんねーし
杉田さんも何も聞いてこねーし
せっかく楽しかったのに
映画も飯も
出発した時とは違う理由で帰りは俯いて、ずっと手を眺めていた
すると突然
「今日、楽しかったか?」
と杉田さんが話しかけてきた
「え?……あ、うん。すげー楽しかった!」
藤本と会ったこと以外は、全部
「そうか。それは良かった」
「……ぇ、と……杉田さんは? 楽しかった?」
杉田さんはヒトミさんのところでは不快な思いしかしてないだろうし
もしかしたら気分悪くしたかな
とか考えて、恐る恐る聞いてみた
