
泣かぬ鼠が身を焦がす
第2章 チーズの夢
素直な感想を言うと、大石さんがびく、と肩を揺らした
「え……」
「すっ……す、すみません!!こんなものしか作れなくて、あの……お気に召さないようでしたら作り直して参ります!!」
カタカタカタカタと音がしそうなほど怯えながら言うもんだから、つい笑ってしまった
「あっははははは!!!」
「!?」
「いいよ、これで。いやむしろこれがいいな、俺」
「いいん、ですか?」
「うん。わざわざ作ってくれたの?ありがとー」
笑いかけると、大石さんはカチン、と固まってしまう
「えぇ……今度はなぁに?」
「あ、えと……なんでもないです……」
「ふは、なんだよー」
なんか、ほんと可愛い人だなぁ
前のとこはこんなことなかったから新鮮
仲良くなれるといいな
「今日ってさ、杉田さんは何時に帰ってくるの?」
「帰社の予定ですか?」
「うん」
俺の質問に、大石さんは懐から取り出した手帳をめくって時間を教えてくれた
「そっか。わかった」
「それでは、仕事がございますので失礼いたします」
「えっ……」
けど、それが済んだらさっさと部屋を出て行ってしまった
なんだ
話し相手になってくれるわけじゃねーんだ
