テキストサイズ

泣かぬ鼠が身を焦がす

第13章 正直の心より


すると自然に笑いながらお礼を言われて、心臓が跳ねた


何今の……!!
拓真さんに「ありがとう」なんて言われたの初めてだから?

え、初めて? そうだっけ

でもほとんど言われたことないよな
って、あ……俺が拓真さんに何かしたことがあんまりないからか


「ね、ねぇ!」
「なんだ?」
「俺に、さ……何かしてもらいたいこととか、ある?」


突拍子もない質問に拓真さんは目をぱちくりさせている


驚いてるけどさ!
俺だって何かしてあげたいなっておもったんだもん!


暫く考えているんだか固まってるんだかわからない間が空いて、拓真さんが俺を抱き寄せた


「わぁ!? 何!?」


そして俺の胸元に顔を埋める


うぐ
恥ずかしい
というか、擽ったい


快感と隣り合わせと言うような微妙な刺激に驚いていると、拓真さんがそのまま


「少しだけ、このままでいてくれ」


って呟いた


「俺の物になったって実感をさせてくれ」
「……」


今、きゅんとした

俺の物だって
俺を必要としてくれてるって


俺は拓真さんの頭を抱き込んでしっかりした毛質の髪を梳いた

真っ黒な髪が日焼けしていない俺の指をすり抜けていく光景がなんだか綺麗だった

ストーリーメニュー

TOPTOPへ