
泣かぬ鼠が身を焦がす
第14章 鼠の志奪うべからず
年上の、しかも男に可愛いとかなんだって感じなんだけど、可愛いもんは可愛いし
惚れた弱み? っていうの?
で仕方ないんだよ
「お疲れ様」
頭を撫でながら労いの言葉を掛けてみる
それでも暫くは返事も何も返ってこなくて、静かな室内で髪が流れる音だけが響いていた
数分間そのままでいたら、息を大きく吸った拓真さんがその息を深く吐いて漸く顔を上げる
「悪い」
第1声で謝られて、意味もわからないしとりあえず首を横に振った
「なんかあったの?」
「いや、別に」
「別にって……そんなわけねーじゃん。疲れてるとかそういうんじゃないの?」
ちゃんとそういうの言えよ、馬鹿
そう思ったけど、拓真さんは俺の頬を手の甲で撫でながら
「本当に何でもないんだ。特別疲れているわけでも何でもないしな」
「じゃあ何で?」
そんなんじゃ納得しないぞ、という意思を表しつつ聞くと
「ただ、なんか……無性に嬉しくなったんだよ。純の顔見れたのが」
「!? は、はぁ!? 意味わかんねーよ!!! 俺の顔、なんて……っ毎日みてんじゃん!!」
恥ずかしい
恥ずかしい
馬鹿
慌てて離れようとしたけど、拓真さんの手に腰を掴まれて抜けられない
