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泣かぬ鼠が身を焦がす

第14章 鼠の志奪うべからず


俺の言葉に、拓真さんは急に顔を顰めた


な、なんだよ
このやろう


そして


「腕が、痛い……」


なんて冗談を言ってくる


「も、もーー……なんだよ……子供じゃん」
「ほら早く。あ」
「…………」


こうやって甘やかす俺も俺なんだろうな


「ほら」


結局、その日の夕飯を拓真さんが自分で食べることはなかった


夕飯を終えて、風呂に入って
まだ寝るにも早いからとソファに座ってテレビを見ていると、拓真さんが俺の横に座ってゴロリと寝転んだ

当然ように頭を膝に乗せられて、最初は抵抗したけどまた懐柔されてしまう


慣れなきゃいけないのかな


なんて考えて、俺が今日話したかった本題をすっかり忘れ去っていることに気がついた


「あっ」
「? どうした」


黒い髪を梳くのをやめると、拓真さんが俺を見上げてくる


言っていいよな?
タイミングとか、ないし

断られる理由もない
はず


「ねぇ、拓真さん」
「ん?」
「あの、さ……俺、そろそろこういう部屋じゃなくて、ちゃんとした家に住みたいな…………なん、て……」


こんな、社長室の横に作った昼寝部屋じゃなくてさ
ほんとこう、ちゃんとした部屋にさぁ

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