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泣かぬ鼠が身を焦がす

第14章 鼠の志奪うべからず


その姿に内心笑って、でもすぐにその慌てる態度の中に少しの怯えが含まれていることに気がついた


怒っていたんじゃないのか?


だが急に切り出す勇気はなくて、当たり障りのない質問をしてしまう


「今日は何してたんだ?」
「え? え、と……なんだろ、寝て、た?」


自分のことのはずなのに途切れ途切れになる答え

俺は相槌を打ちながら目元の涙を拭ってやった


「な、なんだよ……」


少し俺を拒むような態度が嫌で、またキツイ態度を取りそうになるが


いや、堪えろ俺
泣かせておいて自分のエゴを押しつけるな


ぐ、と耐えて純と目を合わせた


「な、に……目ぇ怖いんだけど」
「……」


肺にある空気を固めるように力を入れて、俺は切り出す


「昨日の晩から朝にかけて、態度が悪かった。すまない」


俺の突然の謝罪に純は目を見開いて驚いた


「いや、あの……え、と……うん」


何か考えているようだったが、結局はただの返事が返される

そして気まずそうに目を逸らされると、俺の言おうとしていた決意が揺らいでしまった


畜生
俺はこんなに女々しかったか

純に思いのまま1人暮らしさせてやることも出来ないほど、依存していたという事なんだろうか

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