
泣かぬ鼠が身を焦がす
第14章 鼠の志奪うべからず
「時間もなくてほとんど帰れないし、今はこっちが家のようなものだろ。あんな生活感のない家にいても全く寛げない」
そう、なんだ
「それに、俺と一緒にいる時間が減るだろうが」
耳を甘噛みされて身体が反応する
会える時間が減る……のか
そっか
ならこっちにいた方がお得かな
でも
「今度連れてって」
「引越しなんて認めないぞ」
「見るだけ。それか精々1日お泊りだけでいいから」
俺の要求に拓真さんは少し考える
「それなら、休みを取ってあっちでゆっくりするか」
「え、取れんの? 休みなんて」
「見くびるなよ」
見くびっては、ないけど
「ならそうしよ。プチ旅行」
拓真さんが何考えてるのかちょっと知れたし、会う時間が減るのは
少しは寂しいし
あっちで住みたいはやめよう
楽しみだな
少し先の予定が立ったところでわくわくしていると、俺の首筋にキスをした拓真さんが
「それで、どうして俺の家の方に住みたいって言ったんだ?」
ってまた聞いてきた
「内緒。ずっとわかんなくていいよ」
「だめだ。秘密なんて」
「ミステリアスな方がモテるんだよ」
俺の言葉にむっとする拓真さん
