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泣かぬ鼠が身を焦がす

第14章 鼠の志奪うべからず



意識が戻った時、俺は暖かい何かに全身包まれていた


なんだろ
つか、俺あの後どうなった……?


「……ぅ……」
「目が覚めたか?」
「ぅ、ん……あれ、」


意識がはっきりして、背中側から抱き締められるみたいに拓真さんに支えられながらお風呂に入っていることに気がついた

目を開くと、いつもの光じゃなくて薄暗い中に蝋燭の火が灯っている


「気を失っていたんだ。どこか痛いところはないか?」
「だ、いじょぶ……だけど……どんくらい寝てた?」
「30分ぐらいだな」


30分……
って、結構な長さじゃね?

ま、いいや


俺はお風呂に浮かんでいる小さな半円形のカップを手に取った


「これなに?」
「アロマキャンドル。貰い物なんだが、たまにはこういうのもいいかと思ってな」
「深夜にゆっくり風呂に浸かってていいわけ? 明日も仕事じゃん」


拓真さんは俺の腹に手を回して、肩に顎を乗せてきた


「いいんだよ。明日は休み」
「は? 聞いてない。なんで?」
「俺の家を見たいと言っていただろう?」


え、そのために?
まじか


「いいの?」
「今日やり過ぎたからな。お詫び」


お詫び……
らしくない


俺の失礼な考えを悟られたのか、拓真さんは咎めるように俺の首筋に吸いついた

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