
泣かぬ鼠が身を焦がす
第14章 鼠の志奪うべからず
その後も繰り返しキスをしてくる拓真さん
「やめろよ。今日はもうしないぞ」
「シたいわけじゃない」
「じゃーなんだよ」
ちょっと抵抗すると、拓真さんは言葉の通り本気じゃなかったらしくてすぐにやめた
その代わりなのかなんなのか、俺の肩に静かにお湯を掛けてくれる
「いい匂い、これ」
「なんの匂いだろうな。果物なのはわかるが」
「レモン? グレープフルーツ? なんか、柑橘系だよね」
「こういう匂いが好きなのか?」
薄暗い中に蝋燭なんて演出も相まってすごい心地いい
アロマで癒されるとか全然意味わかんなかったけど、実際使ってみると超わかるわ
めちゃめちゃ癒される
くて、と脱力して拓真さんに寄りかかる
「本当に気に入ったみたいだな」
「んー……こういうの初めてだし、物珍しさもあんのかも」
それから、のんびり抱き締められてんのも気持ちいい
今日は1日すげー不安だったからそのギャップでっていうのもあるのかな
こんなこと絶対本人に言わないけど
「これ、他のもあんの?」
「接待で大量にもらったから、全種あるぞ」
「すげー今度1人の時も使っていい?」
俺が匂いを嗅ぎながら聞くと、拓真さんにすぐさま「だめだ」と否定された
