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泣かぬ鼠が身を焦がす

第14章 鼠の志奪うべからず


「ぅえっ……なんで。別にいいじゃん」


貰ったものは大切にする系なの?
まぁ確かに俺のじゃないけどさ


俺がカップを再びお湯に浮かばせながら聞くと、拓真さんは自分の髪をかきあげながら


「俺と一緒ならいい」


と言った


「なんだよ、それ」


どっちだよ
拓真さんが貰ったものだから拓真さんも使わないといけないのか、俺と一緒に風呂に入りたいのか


答えはわかるようで、わからない


突っ込むのやめよ


「ねー」
「なんだ?」
「明日本当に休み?」
「そうだ」
「そんな急に休みとか出来んの?」


俺の心の中にある少しの嬉しさを隠して、誤魔化すついでに拓真さんの膝を指先で擽る

やめろ、と言わんばかりに立てていた膝を伸ばされた


「社長だからな。1日ぐらい大丈夫だ」
「ふーん?」


手持ち無沙汰になって今度は俺の腹にあった手を弄る


「家どこにあんの? 一戸建て? マンション?」
「マンションだ。場所はーーー」


言われた地名は誰でも知ってる高級住宅街


うへぇ
さすが


「デカい?」
「30階ぐらいまであったか」
「まじで? 地震きたら即死じゃん」
「縁起でもないことを言うな」

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