
泣かぬ鼠が身を焦がす
第17章 千里も一里になるはずで
「いいじゃん別に。俺の勝手でしょ」
「……」
急に黙った拓真さんは、黙々と手を動かしてご飯を食べ続けている
俺も、何も言えずに黙ったまま
結局その後は何も言葉を交わすことなく食事を終えて
「……」
拓真さんは何も言わずに仕事に行ってしまった
怒ってた
すごく
でも……
って俺、さっきから言い訳ばっかり
最悪
怒らせてしまったことと、秘密を打ち明けられないことに対する罪悪感で胸がいっぱいで苦しい
昨日までは、材料が届くからってウキウキしてたのにな
それでもヒトミさんのところに行かないなんて選択肢はなく、俺はいつもより気持ちゆっくり目に準備をして会社を出た
「おはよーヒトミさん」
いつも通り車で送ってもらって、裏口の扉から入る
ヒトミさんに挨拶をすると、挨拶を返しながら振り向いたヒトミさんにすごい顔をされた
「おは、よ……なぁに? そのひっどい顔。犬のフンでも踏んだの?」
犬のフンて……
「踏んでないよ。……ここに来るの、拓真さんに怒られちゃった」
「怒られた?」
「行き過ぎて迷惑じゃないのかって」
「あら」と声を上げたヒトミさんは「意外と肝っ玉の小さい男ね」と言ってコーヒーを淹れてくれた
