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泣かぬ鼠が身を焦がす

第17章 千里も一里になるはずで


「ありがと……」


コーヒーに口をつけながらも尚しゅんと項垂れる俺にヒトミさんは、景気付けるように明るい声を出す


「とにかく! ここまで来たらもうネタバラシして喜んでもらうしかないんだから、頑張りましょ!」


「ねっ」と笑ったヒトミさんに俺も少し元気になった


そうだよね

こうなったらちゃんとプレゼント持っておめでとう言いながら謝ればいいよね


「で、ほらこれが材料。昨日の夜に届いたのよ」
「わぁ、すげー! 高そう……」
「値段はそうでもなくても、見た目はちゃんとしたのがいいでしょう?」


センスがいいってことなのだろうか


俺が初めて見る蝋燭の材料を手に取りながら眺めていると、時計を見たヒトミさんが「そろそろね」と呟いた


「どうしたの?」
「お客さんに詳しい人がいるって話したでしょう? その人が教えに来てくれるんだけど、もうすぐ駅に着くから迎えに行って欲しいのよ」
「いいけど、客なのに場所わかんねーの?」


立ち上がりながら聞くと、ヒトミさんは自分の鞄をごそごそと漁った


「違うわよ。駅ビルにドライフラワーとアロマ扱ってるお店があるから、一緒に選んでもらいなさい」

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