
泣かぬ鼠が身を焦がす
第17章 千里も一里になるはずで
そうなんだ
1人でご飯かー
俺がそんな風に思っていたら、拓真さんがじっとこっちを見ていたことに気がつく
「? なに?」
「………………」
顔も少し不機嫌そうに見えたから聞いてみたんだけど、拓真さんは
「いや」
と言って「行ってくる」と出て行ってしまった
「?」
なんだったんだ?
でも追ってまで聞くほどじゃないし、と俺はそのまま無視してお風呂に入った
今日はずっと集中して作業してたせいか身体が固まってて、あったかいお湯の中に浸かってゆっくり身体を解す
お風呂から上がると、机の上には食事が用意してあった
「ふは、茜さん」
お盆の端には茜さんの丸い文字で『最近ゆっくり話せなくて寂しいぞ! 召し上がれ』と書いたメモが置いてある
やっぱり、俺から見てもすごい魅力的だよなぁ
忘れていた対戦相手(?)の強敵さに身を引き締めつつ、俺はご飯を食べて明日のためにさっさと眠りについた
朝起きるといつも隣で眠っているはずの拓真さんがいなかった
あれ……?
昨日はどっかに泊まったのかな
それとも朝早くから出てった?
熱も何も残っていなくて、少しだけ寂しい気持ちになりながらもそもそと出掛ける準備に取り掛かる
