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泣かぬ鼠が身を焦がす

第3章 枕




ーーー暗闇の中で、誰かが1人ぼっちで泣いていた


誰?
小さい、男の子……?


近寄ってみればすぐにわかった


あぁ、俺か

よく見る夢だ
泣いてる理由も、この後にどうなるかもわかってる

ずっと前から変わらない俺が唯一見る夢


起きたらまた泣いてるんだろうな
早く目が覚めればいい


見たくないと思うけど
目を瞑れない
耳を塞げない

夢の中の俺に許されているのはただ、見ていることだけ


くそ
もうやめてよ

俺は…………っ




「ーーい!おい、ノラ」
「!?」


夢から、覚めた……?


目の前には、杉田さんの顔


「やっと起きたか」
「……え、と……?」
「腕、強く回しすぎ。苦しい」
「あわ、ごめんっ」


いつの間にやら抱き締めた腕には尋常じゃないほどの力が入っていて、苦情を言われた


「おはよう」
「お、はよ……? んぶ」
「…………目ヤニ、付いてる」
「ん、んー……ありがと」


杉田さんに目元を袖で拭われる


あれ、まだワイシャツじゃん


「なんでそのまま寝てんの?」
「昨日は遅かったからな。シャワー浴びるの面倒くさかったんだよ」
「へぇ…………って、そうだ!!!」

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