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泣かぬ鼠が身を焦がす

第18章 遠くなれば薄くなる?


「ぅ……く……」


情けない
最悪だ


「……」


俺が泣いても拓真さんは何も言ってこない


なんだよ
もう

俺のこと好きじゃないなら
もういい

出て行ってやるよ!!!!


俺は部屋を飛び出す

拓真さんがどんな顔をしてたのかは、もう見なかった


エレベーターを呼んでゆっくり待つ時間も惜しくて、非常階段から降りる

最初は勢いに任せて駆け下りて

途中からは、もう足が前に進まなくなっていった


涙で前見えない
こんなに泣いたことないってぐらい泣いてる

やっぱりダメなんだ

俺の大切なものはいつだってなくなっちゃうんだ

家族も、居場所も


長い時間をかけて全部階段降り切って、会社を出た


行く当てもなく、今までみたいに車も使えず

とにかく拓真さんの会社から少しでも離れたくてとぼとぼ歩く


誰も
ってか、拓真さん

追ってきてくれないんだな

あーやばい

また涙でてきた


今すれ違った人絶対俺のこと不審がってたよ


「……っ、ぅ……っく……」


でもだめだ


俺、これからどうしよう
またウリに戻んのか

拓真さん以外とセックスとか
もう考えられないのに

また路地裏の汚い鼠に戻っちゃった

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