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泣かぬ鼠が身を焦がす

第18章 遠くなれば薄くなる?


あてつけにもならないだろうが、本当に外で飯を食ってきてやる


とは思ったが、俺はすぐに社長室を後にはせずドアの前で聞き耳をたてた

中で純が動く音がなくなったら、そっと扉を開ける


さっき純が手を掛けていた引き出しは、普段は寝間着を入れるところじゃない


そんな小さなことが気になって、わざわざ確認しに来たんだ

自分の会社であるのに泥棒のようにゆっくり歩いて、小さな物音すら立てないように行動する

そして引き出しを開けた


「!!」


そこには俺が買い与えた純の服があり、その上には封筒が置かれていた


それにこれ、駅で純が男から受け取っていたものと似ている


ような気がするだけかもしれない

でも、昼間の光景で純に対する不信感を抱いていた俺にはこれだけで十分すぎるほどに衝撃的で


「……」


俺はそっと引き出しを閉めて、部屋を出た

普段なら滅多に食べないその辺のチェーン店で1人食事をして、ビジネスホテルに予約を取る


帰りたくない、なんて女々しい考えなのだろうか
だがこのまま帰っても純を目の前に考えも纏まらないだろう

何パターンもの純が悪いことをしているんじゃない理由を考えて、俺は眠りについた

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